【婚活小話】ミキの婚活
(2020年7月1日更新)
結婚をテーマにした小話です。
婚活の箸休めに御覧ください。
ミキは美人だ。誰が見ても。
大きな黒目がちの目に、すっと通った鼻筋。
サラサラの綺麗な栗毛色の長い髪の毛をかき上げながら、話をするしぐさに
大抵男は、ボーっとした。
実際、学生時代はモテまくり。
付き合った人は、短期間だけれど数知れず。
そんな彼女なのに、誰にも求婚されず32歳になった。
女性の適齢期MAX29歳を超えて32歳になった。
彼女は、ちょっと焦りだし婚活すると言い出した。
はやりの”アプリ”をやり始め、”結婚相談所”にも入会したようだった。
「みんなやってるからね」
と言い訳しながら。
学生時代あんなに美人だった彼女だけれど、歳とともに陰りが見え始めた。
彼女もそれを自覚したのだろう。
どうやらアプリで理想の男性に出会ったようだが、思い通りな展開にならなくてムシャクシャしたらしく、
私の都合も考えず、
「すぐ来てよ。ちょっと聞いてよ」
と呼び出された。
私はいつも彼女の愚痴の聞き役だ。
今回も彼女の長ーい愚痴は始まった。
「お茶して割り勘なんてありえないし。別れ際に手出されたのよ。460円ね。って。ありえないでしょう?」
いつも彼女は私に同意を求めてくる。
ま、手を出すのはどうかと思うけど、お互い働いているんだし。まだ付き合うまでいってないんだから、割り勘でいいじゃない。
何がダメなの?と思ったが、私が意見を言うと彼女はマシンガントークで反論してくるから、そんなこと言わない。
自分の身が大事。
「そうだよねー。基本男性が払うべきだよねー」
と、同意してあげれば、身を乗り出してニコニコ話を続ける。何が楽しいんだか。
「そうでしょう。世の中の女はみんなそう思ってるのよ。たかがお茶代さえ出せないなんて、ケチすぎる。モテないよね」
と、けんもほろろだ。
そして、次々に文句は出てくる。
「また、着てきた洋服が無いのよ。まるでオッサン。一緒に歩きたくないわね。話もぜんっぜんおもしろくないし。アプリで盛り上がって、会うことになったんだから、もう少し気を使うべきなんじゃない?わざわざ忙しいのに休日割いていったんだよ。全く」
それを聞いて、あんたいったい何様?って腹が立ってきたけど、
「ホントだよねー。時間もったいなかったよね。徒労に終わったっていうやつ?」
「そうなんだよねー。うだつが上がらなそうだったし。時間無駄にしたわ」
いつも彼女は上から目線。
全宇宙は彼女を中心にして回ってる。
相手が自分をどう思うかなんてお構いなし。
相手の時間を彼女も奪っているなんて、全く想像もつかないんだろうな。
「ホントいい男っていないよねー。疲れる~。婚活いつまで続ければいいんだろう?」
これが、私と会っている時のミキのいつもの決まり文句。
「大丈夫だよ。ミキならきっといいひと見つかるよ。保証する」
これも、ミキと会った時のいつもの私の決まり文句。
ミキは私の言葉を聞いて安心する。
「ありがと。落ち着いた~」
結婚したいなら、自分以外の人もちゃんと息して存在してて、感情があるんだってわかることだよ。
相手の立場を理解するってこと。
自分に合わせてもらおうなんて無理だよね。
ミキは注文が多いんだから。
相手に合わせることも覚えたほうがいいのかもね。
そうすれば、きっと婚活は卒業できるんだけどな。
で、私、結婚することになったんだけど、いつミキに言えばいいんだろう?